同じお薬をもらっても払う金額が違うんだって(お薬手帳)

調剤薬局で支払うお薬代の謎 その4

これまで「調剤基本料」「後発医薬品調剤体制加算」「基準調剤加算」とご説明してきました。
今回は「薬学管理料」についてです。もしかしたらこの薬学管理料については、スムーズに理解できるかもしれません。というのもこの薬学管理料は「お薬手帳(電子版お薬手帳含む)」に非常に関係しているものなので、皆さんにとっても馴染みがあるものだからです。

薬学管理料とお薬手帳の関係

「うーん、お薬手帳ってよく聞くし薬局でも毎回言われるけど‥‥そもそも何なの?何の役に立つの?」というお声が聞こえてきそうです。
皆さんは「お薬手帳」は持っていますか?紙のハガキ大のお薬手帳をお持ちの方は多いと思いますが、今はスマートフォンで使える「電子版お薬手帳アプリ」もたくさんあって「もうアプリでお薬手帳と同じ管理しているよ」という方もいらっしゃると思います。「いやいやまだまだ紙のお薬手帳のほうが便利だから、シールを貼って保管してるよ」という意見もよく聞きますので、まだまだアナログとデジタルの過渡期なのかもしれませんね。

お薬手帳に関しては、あまり病院にお世話にならない若い方を中心として、よくこういった反応を耳にします。

  • 「風邪なんかの時に気分が悪いのに、お薬手帳がなんだかんだと言われてもいやだな。薬だけ受け取ってすぐに帰りたい!」
  • 「薬局でお薬手帳って言われるけど、他に服用している薬なんか無いから不要でしょ!」
  • 「いつもシールなんかもらっているけど、どっかいってわかんなくなる(たいてい捨てちゃっている)」
  • 「お薬手帳は持っているけど、いつも持っているわけではないから薬局毎にばらばらになってるよ!」
  • などなど。皆さんはいかがでしょうか。

    お薬手帳で安くなる?

    インターネットで検索すると「お薬手帳を持っている方が安くなる!」「いいや高くなる!」といった色々な記事が出てきます。
    2017年3月時点の結論を言えば「2016年4月に実施された調剤報酬の改定によってお薬手帳(電子版お薬手帳も)を薬局に持っていくと安くなります」というのがファイナルアンサーです。
    ただし、前提条件があります。ここが実は厄介で、この記事ではその条件を詳しくご説明します。

    「安くなる」というのは、今回の記事の主題である「薬学管理料で算定される点数が低くなる」ということです。
    どれだけ点数が低くなるかというと、
    「薬剤服用歴管理指導料 50点(500円)」が「38点(380円)」となり、その差分である「12点(120円)」分低くなります。
    これを健康保険の3割負担に換算すると「36円」となり、私たちが払う金額がこの分安くなります。
    「たったそれだけ?!」とお思いかと思いますが、もうちょっと読み進めてみてください。

    お薬手帳で安くなる条件

    ただし、この薬学管理料の点数が38点になるには「3つの条件」があります。まずはそれを説明しましょう。

    • 条件-1 「調剤基本料1」または「調剤基本料4」を算定している薬局に行くこと
    • 条件-2 原則6月以内に処方せんを持参したとき
    • 条件-3 お薬手帳(電子版お薬手帳含む)を持参している(薬剤師さんに伝えてください)
    • この3つです。

      条件-1は、これまでの記事で紹介した「調剤基本料」のことです。お薬手帳持参で安くなる薬局は、調剤基本料6種類の内で「調剤基本料1」と「調剤基本料4」の薬局に限られます。これ以外の調剤基本料2,3,5および特別調剤基本料の薬局では、条件-2と3を満たしていても薬学管理料は50点のままで算定され、低くなりません。
      ここまでの記事を読んできていただいた方は合点がいくと思いますが、この調剤基本料1または4の薬局というのは、いわゆる「門前薬局ではない薬局」です。(一つの分類の仕方であり、例外もあります。詳細は過去記事を参照してください)
      この調剤基本料に関する薬局の情報は、このおくすりロコのサイトが目玉としている情報ですので、是非活用してください。

      条件-2は、初めてその薬局に行ったときや、過去に行ったことのある薬局でも前回行った時から6ヶ月を超えている場合はお薬手帳を持参しても薬学管理料は50点となります。
      条件-3は、お薬手帳(電子版お薬手帳含む)を持参して「お薬手帳を使っています」と伝えることですね。

      インターネットの記事によっては、制約条件無く「お薬手帳を持参すれば安くなる」ということを喧伝しているものも見受けられますが、実際の適用に対して上記のような前提条件がきっちりと定められていますので、少しでも金額を安くしたい場合はこれらをちゃんと事前に押さえておくことが肝要です。

      36円も塵も積もれば・・・

      さて、私はいまや国民病などと言われている花粉症です。毎年1月半ばから5月の連休明けまで、定期的に病院に通い、ずーーーーとお薬を服用しています。その期間、ざっと17週間ほどになります。
      2週間毎にお薬をもらうとして考えると、この期間に9回は病院に行って、その度に薬局にも9回行くことになります。

      私の場合、上記の前提条件を満たしたとすると薬学管理料は以下のようになります。

    • 初回は50点
    • 2回目以降は38点
    • となり、自己負担金(3割)は(50点-38点)× 8回 × 10 ×0.3 = 12 × 8 × 10 × 0.3 = 960 × 0.3 = 288円 となります。
      お昼のランチには届きませんが、コンビニでドリンクとちょっとしたおやつくらいは買えそうですね。
      個人単位で見るとこの程度の節約効果ですが、医療費として考えると960円となります。つまり現在の医療制度において至上命題である「膨大な医療費に対する削減策」としてみれば、たった36円が、巡り巡って医療費全体へ与える削減インパクトは決して低くはないはずです。まぁ、そこまで大きな考えでお薬手帳を使うということはないでしょうけど、家計にとっても塵も積もればという言葉は当てはまるので、知っておいて損はないことと思います。
      もっとも、お薬手帳に期待されている本質的な効果というのは、薬の重複投与や飲み合わせによる相互作用の防止であったり、残薬の把握などといったこの金額に換算できない価値のあるものなので、私たち自身のために、是非お薬手帳は使うようにしてください。

      ちなみに私はこの度紙のお薬手帳からスマートフォンアプリの電子お薬手帳にしました!!
      薬局で初回から電子版お薬手帳用のQRコードちょうだいと言いましたら毎回くれるようになりました。もらった領収証を見たら、ちゃんと2回目から38点になっていました!(当たり前ですが)

      薬学管理料に関する注意

      ただ、薬学管理料(薬剤服用歴管理指導料)で誤解しないでいただきたいのは、「お薬手帳を持っているから」だけではありません。
      改定の説明には「患者に対して、次の掲げる指導等の全てを行った場合に、処方せん受付1回につき所定の点数(50点または38点)を算定する。ただし、手帳を持参していない患者又は調剤基本料1又は4以外の調剤基本料を算定する保険薬局に処方せんを持参した患者に対して、次に掲げる指導等の全てをおこなった場合は50点を算定する。」となっており、「指導等」というのは下記のように記されています。

       
      指導等
      患者ごとに作成された薬剤服用歴に基づき、薬剤情報提供文書により患者又は現に薬剤を管理しているものに提供し、薬剤の服用に関して基本的な説明を行うこと
      処方された薬剤について、患者等から服薬状況等の情報を収集して薬剤服用歴に記録し、これに基づき薬剤の服用等に関して必要な指導を行うこと
      手帳を用いる場合は、調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量その他服用に際して注意すべき事項を手帳に記載すること 患者ごとに作成された薬剤服用歴や、患者等からの情報により、これまでに投薬された薬剤のうち服薬していないものの有無の確認を行うこと
      必要に応じて薬剤情報提供文書により、投薬に係る薬剤に対する後発医薬品に関する情報(後発医薬品の有無及び価格に関する情報を含む。)を患者に提供すること

      また難しい文章がでてきましたが、要は「お薬を渡すときに薬の詳細(薬の説明、後発医薬品など)をしっかり説明して患者さんに渡したお薬を「歴」として保存し、服用している薬全般に対して指導をおこなわないとダメですよ」ということです。薬剤師さんが「お薬手帳を持参していますか」「お薬手帳を持ってきてくださいね」という呼びかけをすることも指導の一つなのです。

      若い方のお薬手帳所有率が低いと聞きますが、自分にとってメリットの有る指導をしてもらえてなおかつ多少なりとも金額も安くなるんだったら「お薬手帳」を活用しない手はないですね。
      かといってお薬手帳をいつもカバンに入れておく、というのも面倒に思う方も多いでしょう。そういった方は、とりあえず今は使わなくとも、スマートフォンアプリのお薬手帳をインストールして、いつでも使えるようにしておくだけでもいいと思います。くれぐれもお薬手帳アプリをインストールしている事自体、忘れないように!
      iPhoneであればAppStore、AndroidであればGooglePlayで「お薬手帳」と検索してみてください。びっくりするくらい、色々なお薬手帳アプリが出てきます。
      薬局でお薬手帳用のQRコードをもらえばお薬の情報をためることはすべてのお薬手帳アプリでできます。しかし、それ以外の便利機能はいろいろあって各種様々な特徴を持った機能(例えば処方せんを事前に薬局に送って予約する機能やお薬の詳細な情報が画像つきでアプリで見ることができる機能など)が使えますので、自分にあったものを選択することが大切です。レビューなどの点数が高いものを選ぶというのも一つの方法です。

      またお薬手帳アプリを使う場合、お薬情報の登録をよりスムーズにするために「お薬手帳用のQRコードをください」と忘れずに薬剤師さんに伝えてください。

      補足:2016年より前は・・・

      2016年4月の改定前までは、実際には薬学管理料の算定はこの記事の逆となっており、「お薬手帳を持参しない(もらわない)と低い点数になる(安くなる)」という状況でした。
      「持っていかない」「いらない」とすると薬局で払う金額が安くなるということで、ライフハック的に一部インターネットでも話題になりました。
      2017年3月時点では、上記に書いたように「お薬手帳を持参してもらうことを当たり前にするように」持参した場合に(前提条件はありますが)安くなります。
      実際に薬局の方に聞くと、改定の前後でこのような真逆な解釈になるのはめずらしいことのようです。

      ここまでのまとめ

      • 薬局に行くときは忘れずに「お薬手帳(電子版お薬手帳含む)」を持参しよう!
      • 薬学管理料を安くしたいなら、調剤基本料1または4の薬局かどうか、事前に確認すること!
      • 6ヶ月以内に同じ薬局に行った際には薬学管理料が38点になっているか領収証をチェックすること!

      もし要件を満たした上で38点になっていなかったら、薬剤師さんにちゃんと確認しましょう。
      スマートフォンアプリのお薬手帳も便利ですし、それなら大抵の場合は忘れるということも無いと思うので、一つインストールしておくことをおススメします。
      肝心の調剤基本料について、インターネット探しても多分出てきません。手前味噌ですが、この「おくすりロコ」のサイトでチェックしましょうね。

      さて、これまで「なぜ薬局によって同じ処方せんでも支払う金額が違うのか」という薬局の謎についてご説明してきました。
      色々な基準によって算定される点数が決まり、その点数が私たちが支払う金額に直結していることがご理解いただけましでしょうか?
      普段薬局に縁のない人も、仕組みを知っておくことは大切だと思います。

      また薬局にしょっちゅう行くという人は、これらの仕組みを理解すれば、自分にとって合っている薬局を選ぶ時の客観的な判断基準にもなると思います(口コミは人それぞれ主観的な印象なので必ずしも自分がそう思えるかはわかりませんからね)。
      自分だけでなく、お子さんがいれば子供の薬局を選ぶ、自分の親のかかりつけの薬局を決めるといった時に、これらの情報がお役に立てるのではないかと思います。
      すこしでもおくすりロコが、皆さんの生活に役立てば幸いです。

      さて、次回は全国共通の「薬剤料」についてです。ちょっと一息ついたらぜひお読みください!

      調剤薬局で支払うお薬代の謎 その5を読む

      • 本記事は執筆時点(2017年3月)での内容となります。
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